イメージを持つ人ではあるが、
中身はなんてことはない、ただの陽気なおっさんである。怒ると怖いが。
 父は昔から霊感があるらしく、世の中の常識から外れた怪現象を目撃する事が多々あった。 
 そして、私自身にもそんな父の特異体質は遺伝したらしく、昔から不思議な物を
見る事がよくあった。 
さて、私が小さい頃から、父は自分の子供をからかって遊ぶ事が好きだった。
 焼肉屋にご飯を食べに行くと必ず。 
 「ほら、窓の外見ててみ。今からそこを、これからさばかれる牛が逃げていきよるから」 
 と言って窓の外を指差した。 
 小さな私は当然のように父の言葉を信じ、わくわくしながら窓の向こうを見続けるのだが、 
 牛が逃げていく様を見る事は一度もなかった。 
 またある時は、回転すし屋の水槽でゆうゆうと泳ぐブリを見て、小さな弟にこう言った。 
 「よう見てみ、あの魚な、あの尻尾の所から電池入れるんやで。」 
 「電動!?」という私のツッコミに、カウンターの向こうで働いていた職人さんが
堪え切れずに噴出した。   
用事で帰りが遅くなり、時刻は既に午前1時を過ぎていた。
 県道を時速90kmで飛ばす車の中で、特に会話もなくラジオを聴いていたら、
父が突然口を開いた。 
「見ててみ、 今から女が飛び降りるから 」
 父の言葉についていけず、私が「は?」と思っていると、家の近くにある、
それなりに大きな川に架かった橋に車が差し掛かった。 
 進行方向左手の歩道に人影が見える。今は距離が遠くてよく分からないが、
車はどんどん人影に近づいていく。 
肩にあたるぐらいの髪の長さで、茶色いスカートを穿いた女の人だった。
どんどん車が近づいていく。もう顔もはっきりわかる。
「あ」
一瞬だった。
女の人は軽い動きで橋の欄干を超えて、階段を下りる見たいな動きで橋の下に消えた。
 私はパニックに陥り、運転席に座る父の肩をバンバン叩いて車を停めるように懇願した。
今考えれば危ない事である。 
 しかし投身自殺を目撃してしまったのだ。それどころではない。早く救急車を呼ばなければ。 
 しかし父は私の猛攻を無視して、走り続けながら落ち着けと言う。 
 「落ち着けるわけ無いやろ!!早く救急車呼ばなあかんやん!!!」 
 「呼んでも意味無いで、アレはもう死んでるから」 
 「そんなん分からんやんか!まだ生きてるかも知らんやろ!?」 
「死んでるよ、俺があの女を見るんはもう5回目やからな」
父の言っている意味がわからず、思わず私の動きが止まる。
「もうずいぶん前に死んでるんや。でもそれに気づいてない。」
そこでやっと気づいた。さっき見た女の人は、あちら側のモノだったのだ。
 「自殺した人間っていうのは、自分から死にに行くくせに、本能のどこかでまだ自分は
生きてるんじゃないだろうかと思う事があるらしいわ。 
そんな思いがああいう形で残って、『また失敗した、早く死ななければ』って同じ事を
繰り返すんやって。」 
 何回も何回も自分の死を知らずに、同じ自殺を繰り返す霊、さっき見たモノもそういう類だろう。 
 悲しいなぁ…と父は小さな声で言った。 
 曲がり角を曲がると、もう橋は見えない。 
 変わりに、見慣れた近所の町並みが窓の外を流れていく。 
 以来、昼でもできるだけその橋は利用しないようになった。夜なら尚更だ。 
 今でも彼女は、あの場所で死に続けているのだろうか。 
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