事務処理とごくまれにある来客の対応 そんなことをしていた
俺は、給料が良いという理由で深夜勤務を希望していた
新卒入社で最初の3年はA先輩と二人で事務所詰め
深夜はそれこそ来客も電話も無いので2人で十分
先輩は元気な人で、俺が定時に出勤すると必ず先にいて「オッス!お疲れ!」って挨拶してきた
先輩は仕事以外のことは色々と教えてくれた
仕事のことは「てきとーにやってればいいんじゃない?」とろくに教えてくれなかったけど
仕事はといえば、ほとんどやることもなくダラダラと一晩過ごして夜明け頃に交代して帰宅
これだけで日勤の3割り増しの給料になる
ただ、何もしなくても、ずっと夜勤ってのはやっぱり疲れる
10年頑張って金貯めて転職しよう とか考えてた
昼間は遊べないし、夜は仕事してるので金も貯まるだろう そう思ってた
それ以降は俺とB君が夜勤
B君は俺と同じような考えで「給料良いから夜勤にしました」なんて言ってた
A先輩はそのころ結婚(何故か昼間の事務員の可愛い子をもらってた)し
日勤にしたいと希望を出していたようなのですんなりと配置換えが行われた
同年代でなんとなく趣味も合い、B君とは上手くやってた
毎晩バカな話をして楽しく過ごしていた
時折意味不明なことを言ったり、なんとなく言葉の使い方が変だな?って思うこともあったけど
俺は友達が少ないから、B君なら友達になれるかなと思って休日に遊びに行かないか?
等誘ってみたりもしたんだが
「勤務先の人とプライベートはどーたらこーたら」ってはぐらかされて結局一度も職場以外では
会うことがなかった
まぁ、それでもB君とは楽しく仕事をしていた
その頃、倉庫を少し拡張していたので当番の人数を増やそうということで社員を募集してたんだ
「今日から一緒に夜勤することになったCです よろしくお願いします」って入ってきた娘は色白で
可愛い娘だった
何となく、声と笑顔が儚そうというか、幸薄そうというか、淡い感じの娘だったんだけど
その娘は俺に仕事を教われと言われたのか、殆ど俺にしか話しかけてこなかった
俺とB君が話してる時はあまり話に加わらず、仕事の用件で俺に話しかけた時に軽く雑談する
ぐらいしか話らしい話はしなかった
B君もその娘が俺に話しかけている時は話に入ってこなかった
それから一週間が過ぎた頃、Cが出勤してこなくなった
初日は風邪かな?と思い、B君も気にしていない様子だったのでそのままほっておいた
2日目にさすがにおかしいなと思い明け方頃にB君に聞いた
「C、なんで休んでるのか知ってる?」
「Cって誰っすか?日勤の子?」
「いやいやいやいや、ちょっとまて一週間一緒にいたじゃないか… この前入った新入社員の娘だよ」
B君はまた不思議そうな顔をして言ったよ
「は?ここ5年新入社員なんて入って無いじゃないっすか なに言ってんすか」
え?え? なにいってんのコイツ? って思った瞬間B君はなんとも言えない顔で笑ったよ
「ケケケケケケケケケケケケケ」甲高い笑い声
「先輩つかれてるんすよww ゆっくり休んだ方がいいですよ 僕も今日は帰りますwww」
B君は帰り支度をして最期に意味不明なことを言ったんだ
「しかし、種類が違うと見えないんすねwww」
よくわかんなかった
その日は考えもまとまらず家に帰っても何を考えるでも無しぼーっと過ごした
出勤する時間になって「よし、もう一回B君に話を聞こう」と心に決めて会社に向かった
「オッス!お疲れ!!」
ってA先輩が元気に挨拶してきた
「あれ?先輩どうしたんですか?」って聞いたら
「ん?なにが? オマエこそ変だぞ つかれた顔してる 大丈夫か?」って言われた
「B君は今日は休みなんですか?」って聞いたら
「Bって誰だ?昼間のヤツだっけ?」って言われ「オマエ、ほんと変だな」って言って笑い出した
「ケケケケケケケケケケケケ」B君と同じような甲高い笑い声…
なんかもう怖くなって「今日は休ませて下さい」って言い残して帰った
午前中、会社に行って辞めたい旨社長に伝えた
「人手不足だから急に言われても困るんだよねぇ 夜勤どうしたらいいの?」などと言いながらも
せっぱ詰まってる俺を見て退職は承諾してくれた
それっきりそこには行ってない
俺のあの6年はなんだったんだろう
もう夜勤はこりごりだよ…
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