
引用元: ・ほんのりと怖い話スレ その93
 池の鯉をみたり、お寺に飼われてた猫のミケと遊ぶのが楽しかった。 
 じいちゃんのお墓にお参りして、 
 周りに生えてるタンポポを摘んでお供えしたりしてた。 
ある日、いつものようにタンポポを摘んでいたら、着物を着たおばあちゃんが声をかけて来た。
 「泉さんとこの和子ちゃんでしょ? しばらく見ないうちに大きくなって」 
 と、おばあちゃんは笑ってた。 
 おばあちゃんはどこのお家のおばあちゃんかって聞くと、 
 「山口先生のとこのおばあちゃんよ」 
 と、答えた。 
山口先生は近所の小児科の先生で、私も熱をだしたりするとその先生の所で診てもらってた。
「おばあちゃんね、迷子になっちゃたのよ。お墓までは来れたのに、先生のお家まで行く道がわからなくなって困ってたの。」
大人でも迷子になるんだんね。
 あっちの門を出て、まっすぐ行って、
車がたくさん通ってる道を左に曲がって、またまっすぐ行くんだよ。 
信号は渡っちゃだめだからね、と教えてあげた。
 おばあちゃんは、 
 「どうもありがとう。きちんと教えられて偉いわね。これはお礼。」 
 と、言って明治ミルクキャラメルをくれた。 
夜の8時頃、山口先生が往診に来てくれて、お尻に注射をうたれた。
 偉いねって褒められた事を言いたくて、昼間の事を話して、
先生のおばあちゃんからもらった明治ミルクキャラメルを見せた。 
 先生と母親はびっくりしたように顔を見合わせた。 
 私は多分そのまま眠ってしまったんだろう。
目が覚めたら朝になっていて、熱もすっかりひいていた。 
 あとから知ったんだけど、おばあちゃんは前の年になくなっていて、事情があり分骨したんだそうだ。
 
 キャラメルはおばあちゃんの大好物で、入れ歯につかないように、
一粒をゆっくり時間をかけて噛まずになめてたんだって。