数年前、会社の飲み会でしこたま飲んだ帰り道。最寄り駅から自宅までの経路で大通りから一本外れた裏通りを使ってた。
数年前、会社の飲み会でしこたま飲んだ帰り道。最寄り駅から自宅までの経路で大通りから一本外れた裏通りを使ってた。
足元が怪しくなって、ややろれつが回りづらくなっていたが、記憶はしっかりしてるタイプなのでわりと克明に覚えている。
酔っ払った時はよく分からない勢いで、よく分からないことをしてしまうのが世の常なんだが、その時俺は何の気なしに道端に設置された道路標識のポールに全力で水平チョップをした。理由は特にない。
その時の感触は良く覚えてる。水を手でかき回すときのようなささやかな抵抗だけがあり、俺の手が標識のポールを通過した。
「えっ?」と思ったのと、ポールがアスファルトの上に倒れて「ガシャン!」と大きな音を立てたのと、どちらが先だったのかすら覚えていないが、音がした瞬間にとにかくやばい、とパニくって後も確かめずに自宅まで怪しい足取りで、それでもなかば走って帰った。
その後は何も考えないようにして布団を被って寝た。
翌朝、朝食を買いにコンビニに行きがてらその道を通ると、昨夜の事は夢ではなく、ポールは綺麗に折れ、半分から先は道路の上に倒れてた。
いや、折れてたと言うとちょっと違う。鋭利な刃物でスパッと切ったような綺麗な断面を見せていた。
目撃者は多分いないだろうから大丈夫だとは思っていたが、俺がしでかした器物破損には違いないので、それを確かめた後はその通りはしばらく使わないようにしてた。
一週間くらいして夜中に様子見に通ってみると溶接と接木?で修復されてた。
あれから数年、同じような事は起きてないが、たまにあの感触をまざまざと思い出す。特に人に触れる時には、いつあの現象が起きるのかとビクビクしてしまう。