人生で1回体験した不思議な出来事です。25年前の話です。
なんの工場か書くと特定されてしまうので、何の工場かは伏せます。
中1になって、仲の良い遊び友達二人は塾に通い始めました。
その友達二人は同じ塾に通っていて、俺にも「塾へ来たら?」というので
親に頼み、その塾へ行かせて貰うことにしました。
その塾は昔、火災を起こした工場(総鉄筋コンクリート作り)の端、4階に
ありました。工場はどの階も仕切り壁はなく建物の端から端までの1部屋と
なっていると聞きました。そしてその塾の教室は、新たに簡易的な壁を建てて
部屋を作っていました。
その火災を起こした工場ではパート従業員の婦人や老人が
働いていて、大勢の方が亡くなられたと聞きました。50年以上前の火災です。
その火災が原因で廃業し、建物は20年以上空きとなりました。
窓は全て取り払われ、木の板が貼り付けてありました。
塾の教室だけは窓を取り付けてありました。
塾の教室へいくには建物の端にある建物と同化したコンクリート製の
階段(非常階段)を登ることになります。塾は夜の7時から始まります。
塾の初日、冬も近い秋の夕暮れ6時半頃、僕は1人で4階の教室に向かいました。
階段の段1つが大きめで急な、らせん階段状(階段に中階があるようなタイプ)の
階段を登っていると今、何階なのかよく分からなくなるのです。しかも足音が
響くため、誰かに後ろから付けてこられているような気味悪さがありました。
ハアハア言いながら登りました。ここは何階だ?何も書いていませんでした。
多分3階の鉄ドアだったと思います。ドアノブに手を掛けると鍵がかかっていて
回せませんでした。もう一つ上の階なんだけど、なぜか4階を素通りしてしまい
5階の鉄ドアの前まできました。ドアの向こうから微かにワイワイと人の声が
聞こえました。 「あ、ここだ。」そう思ってドアノブに手をかけ何の疑いもなく
ドアノブを回しました。回せました。
鉄ドアを開けると、声がパッと消えて、外の夕暮れの薄明かりが真っ暗な部屋の
5m先ぐらいまでを映しだしました。何らかの道具が埃をかぶって散乱してました。
30m以上ある吸い込まれそうな程、真っ暗な部屋。
今の声はなんだ? 正直、僕は腰が抜けそうな程、ビビリました。
急いで1階まで階段を降りました。その降りている最中も足音が響いて
追いかけられてるような感じで、すぐ背後にも気配を感じました。
階段から転げ落ちそうでした。
イヤだけど行くしかないという事で、今度はちゃんと1階、2階と確認し
4階の鉄扉を開けると、蛍光灯の明るい部屋がそこにはありました。
しかも静かでした。
塾は1年通ってやめました。建物はその3年後ぐらいに取り壊されました。