俺が厨房の頃、半端なく怪談とか流行ってたんよね
ポルノグラフィティの「アポロ」の出だしで女の人の呟く声が入ってるとか、
稲川さんがテレビ出演してるとき、いつも女の人を背負ってるとかね。
すんげぇしょうもないことばっかだったんだけど。
まぁ流行りだったわけで、周りに合わせて俺もハマってたわけだ。
ある日、俺の親友でよくいっしょに仕入れた怪談ネタを話し合ってるKって奴が、
「近所に潰れたボウリング店あるやろ?あそこジョーダン抜きで出るらしいで」
と言ってきた。
そのボウリング店とは、最寄の駅近くにあって、俺の物心ついたときには既に潰れてた。
バブルが弾けたはずみでに潰れたのかと。
気味が悪いのは確かだ。よくヤンキーどもが出入りしてるらしいし、近づきたくはなかった。
そのKはその店に俺といっしょに行こうと誘った。
怪談を話し合ったりうわさを聞くくらいならぜんぜん平気だが、
実際にいくとなるとだめだ。生粋のビビリだから。
でも怖いもの見たさとKの強引な誘いに負け、結局2人でいくことに。
実はKには霊感があるようで、道端でいきなり「ほらあそこ3人いる」とか言ってくるときがある。
普通霊感があるなら瘴気霊気ムンムンなとこにはいきたがらないはずなんだけどね。
Kは別で、出る!って噂のとこには絶対にいく。
今回ははじめて俺が誘われた。内心ちょっと期待してたかも。
そして日曜の夕方6時。
真夏だったが、さすがに薄暗い。
ボウリング店にはとうぜん電灯などなく、懐中電灯は持参してきた。
俺はちょっと遅れて到着。
さっそくKといっしょに入り口にさしかかった。
しかし正面の入り口は鍵がかかってた。
裏口も頑丈な鍵がかかってて中には入れなかった。
しかし、Kはもっと奥のほうへと歩いていった。
「ここなら入れるじゃん」
先には割れた窓があって、ちょうど人が一人入れるくらいのスペース。
先にK、次に俺の順でボウリング店突入。
入ったときの感想は、汚いのとやはり半端なく気味が悪い。
落書きがひどく、床には得体の知れないゴミが四散してた。
俺とKは先へ進んだ。
「この先の女子便所がやばいらしい。2人出るそうや」
Kがボソっとつぶやいたので、俺はははっと苦笑いしてた。
気づかないうちに俺はKの腕に擦り寄ってた;
3分くらい歩いてそれらしい部屋の前へ到着。
外もすっかり暗くなってた。懐中電灯の照らす赤い光がすべてを気味悪く映す。
俺のビビリボンテージは絶頂に到達しそうだったので、Kに戻ろうぜと言ったが、
「んじゃおめェ一人で帰って寝てろや」と言われムッとなりしょうがないので一緒に入ることにした。
Kがドアノブを4回くらい回し、ギギャッと嫌な音を出して扉が開いた。
中からなんともいえない異臭が漂う。乾いた便所の匂いだ(?
Kと俺が中に入ってすぐに横の化粧鏡に気づいた。
Kは鏡に映った俺とK自身の姿をじっと見つめた。
「!!」
Kが突然すごい形相になり言った
「いますぐ逃げるで!はよ!」
俺はなにがなんだかわからなかったが、Kのフードをつかんで一目散にエスケープ。
ボウリング店を出てからも大分走り、家の近くになりようやくとまった。
俺はKになぜ逃げたか事情を聞いたが、なぜか話そうとしない。
それから学校で何回かKと会ったが、話もしようとしない。
そんなKに立腹した俺は、「いい加減にしろよ。どうしたんだよ一体」とKに詰め寄った。
するとKの口からとんでもない言葉が出た。
「あんとき鏡みたやろ?わいと、おまえの背中に一人ずつ女が負ぶさってたのが見えたんや・・」
俺はそれを聞いた瞬間絶句したが、なぜ数週間たった今でもなおそんな様子なんだと
再度尋ねた。
「だっていまも負ぶさってるんやもん・・」