117: 本当にあった怖い名無し 2011/04/19(火) 21:35:16.24 ID:
知り合いの話。
秋山で、一人露営していた時のこと。
そろそろ寝ようかという頃合に、微かな音が聞こえた。
音のする方を見やると、営地の外れで黒い影が踊っていた。
118: 本当にあった怖い名無し 2011/04/19(火) 21:59:51.70 ID:
黒く濡れたような細長いリボンが、回るように歌うように踊っている跳ねている。
鼬(イタチ)だった。
白く大きな満月の下、一匹の鼬(イタチ)がクルクルと舞っていた。
まるで水墨画がそのまま動き出したような、幻想的で幽玄な雰囲気に飲み込まれ、そのまま魅入ってしまったそうだ。
どのくらい経ったのか?
119: 本当にあった怖い名無し 2011/04/19(火) 23:58:11.78 ID:
我に帰ると月は既に傾き、鼬(イタチ)も消えていた。
頭を一つ振ると、左の手首に鋭い痛み。
ぱっくりと傷が開いており、血が出ていた。
幸い傷は小さく血も止まりかけていたので、応急処置をして寝たという。
120: 本当にあった怖い名無し 2011/04/20(水) 00:23:51.69 ID:
山を降りてから、知り合いの炭焼きにこの話をしてみた。
「そりゃ化かされたな。あいつ等の中には血吸いもいるからなぁ」
121: 本当にあった怖い名無し 2011/04/20(水) 01:21:53.87 ID:
炭焼きが言うには、年経た鼬(イタチ)は人を化かすようになるのだという。
そのような鼬(イタチ)は、人間を幻惑して夢現の状態にできるそうだ。
術にかかった人間が桃源郷に遊ぶ間に、ゆっくりと血を吸うのだと。
そのような鼬(イタチ)は、人間を幻惑して夢現の状態にできるそうだ。
術にかかった人間が桃源郷に遊ぶ間に、ゆっくりと血を吸うのだと。
122: 本当にあった怖い名無し 2011/04/20(水) 10:40:59.11 ID:
「大して出血する訳でないし、怪我も小さいけど、一応注意しとけ」
そう言いながら、炭焼きは竹で焼いたという塩を振りかけてくれた。
彼はそれを聞いても、なぜか怖いとか嫌だとかは思わなかった。
123: 本当にあった怖い名無し 2011/04/20(水) 14:43:54.76 ID:
以来、苛々したりすると、あの白と黒の情景を思い浮かべるようになったという。
そうすると不思議に心が静まるのだと。
「俺は未だに化かされているのかもしれないな」
そう言う彼の顔はどこか穏やかに見えると、私は最近思うようになっている。