1年の時は筑波山、高尾山などの東京からのアクセスが良く、人気もある山を登りつくし、2年になると奥多摩や秩父といったいわゆる縦走(スタート地点とゴール地点が異なる登山スタイル)が出来る山にはまった。
そんな2年の夏休みに奥多摩のとある山に登った時の話である。
同じクラスに運良く同じ山登りが趣味の奴が居たんで、そいつと計画を練り、朝7:00に新宿に待ち合わせ。
電車の中では爆睡し、奥多摩に着くとそこからバスに乗り30分程度で登山口に到着した。
天気はあいにくの霧。でもそんなの関係ねぇ(懐かしい!)とばかりに登っていく。
前にも少し書いたことがあるが、景色というのは登山の楽しみの1つであって全てではないと思ってるんでね。
晴れてれば気持ちは良いが、霧がかった山も幻想的であり、涼しく、リラックスも出来る。それに途中に滝もある為、霧だろうが気分は上々だった。
しばらく登ってお目当ての滝で一呼吸入れ、写真を撮ったりした後、頂上を目指して登っていった。
ここで不意に友達のスピードがグングン上がり、先に行ってるよと言い残し早い足取りで登って行くと見えなくなった。
体力あるなーと思いながらも、別に急いでる訳でもないしのんびり行こうと決めた…が、やはり1人で山に取り残される寂しさもあり、心なしか登るペースは上がった。
しかし、一向に友達の姿は見えない。
やけに速いなと思うが、もしやという可能性が無いわけではないので、頂上から降りてくる人に「すみませんが、水色の服を着た俺と同い年くらいの男、見ませんでした?」と聞いてみると答えは「いやー、見なかったと思いますよ」だった。
これはまずいパターンだなと少々焦ったんだけど、頂上へのコースは1つではなかったので、とりあえず頂上に行ってみるかと思い、そこから早足で一時間登り頂上に着いた。
が、期待は外れ友達の姿は見えない。
うわっ、マジかよとか焦りながらも老夫婦が居たのでさっきと同じ質問をしてみたが、やはり答えはノー。
残る可能性として先に俺が着いたか、アクシデントがあって途中で帰ったかor動けずにどっかに居るかのどれかである。
それからというものおにぎりを食べながら下山時刻ギリギリまで待ってみるものの現れる気配無し。
ケータイも電波が立ってないので使い物にならなかった。
仕方なく縦走を止め、元来た道を引き返すことに。崖の下を注意しながら下るが水色らしき服すら見当たらない。
登山口に着いたところで携帯が使えたので警察に電話しようとした、が、万が一のことがあるので一応本人に電話してみることに。
すると…
「もっし~」
「うわっ、出た!ビックリしたぁ!どーしたの?てか、今どこ?」
「ん?どーしたのはこっちの台詞なんだけど。どこって学校に決まってんじゃん」
「はぁ???」
「はぁ?って何。何か今日約束してたっけ?」
「学校?」
「そだよ、夏期講習取ってるし。いやー、○○(数学教員)の話つまんなかったー。今から遊ぶ?」
「え?てか…え?」
「やべっ、△△(生活指導教員)来た!後でかけ直す」
プープープー…。
俺、電話かける人間違えてないよな?
うん、間違いなくあいつの声だったし。
…学校?夏期講習?と頭ん中は?でいっぱいだった。
とりあえず、メールで「無事?」と送ると「何とかバレずに済んだ。セーフ。」と返ってきた。…別にそーゆー意味で無事?って送ったんじゃないんだけど、まぁ、身体も無事だろうなと一安心。
俺は一人でバスに乗って、一人で新宿まで帰った。
後々話し合った結果、
1.友達はその日、夏期講習に行っていて朝から夕方まで学校にいた。
2.もちろん登山には行っていない。
3.それどころか一緒に計画すら練っていなかった。
何かあんまりにぶっ飛び過ぎてて話の内容が分かりにくかったかもしれないけど、要約すると俺は友達"みたいな人"と山登りに行き、友達"みたいな人"は山ん中で消えて、俺は一人で帰ってきたって奇妙な話。
今でも付き合いのある友達だけど、未だにたまに「コイツ本物か?」と思う時がある。
山ん中で消えたのが本物ってことはないよな?