今から20年程前、夫が専門学生だった時です。
友人3人と、その中の1人のアパートで夜中まで麻雀をして遊んでいました。
夜0時を回ってそろそろ麻雀にも飽きてきた頃、1人が『海が見たいな〜』と冗談で言ったのですが、若者のノリで『じゃー行こうぜ!』という事になり、4人で車に乗り込み、ワイワイ九十九里の海を目指しました。
まだカーナビもない頃ですから、紙の地図を頼りに目的地を目指していたのですが、だいぶ近づいて来た所でこのまま行くと一番の近道は有料道路になると分かりました。
若い学生の事なので、有料道路は嫌だな〜という事になり、一般道はないかと地図を見たのですが、ちょうど良い道路がありません。しかしよく見ると、その有料道路からそんなに離れない形ですごく細い道が載っていたので、『おーそこでいいじゃん』という事になり、4人はその道に向いました。
しばらくしてその道にさしかかってみると、そこは農道という感じの本当に小さな道で、左右は畑で真っ暗、一応ぽつぽつと街灯はあるようでした。
見てみると、道ばたに2体のお地蔵様がありました。
『おーほんとだ〜!』と他の3人もお地蔵を確認。
そのA君というのは、帰国子女なのに英語が喋れないという事を普段からネタにしていて、ふざける時にはなんとなく英語っぽい口調になる、というのがお決まりだったのです。
と、また『Oh!地蔵〜!』とA君。
たしかに道ばたにお地蔵様が2体。
するとまた『Oh!地蔵〜!』と、2体。
3回も連続したのでだんだん面白くなってきた4人は誰が次のお地蔵様を先に見つけるかと窓の外に目を凝らしていると、やはりまたお地蔵様が。
『おぉ〜マジで?!』と盛り上がる4人。
しかしそのすぐ先にお地蔵様、お地蔵様、お地蔵様…
等間隔で次々出てくるのです。
しかも最初の方より段々間隔が短くなっているようで、さすがに『おい、あり過ぎだろー』とB君、正直4人は気味が悪くなっていました。
しかもよく考えると、そのお地蔵様たちはみんな同じもので、全部2体ずつ。
そんな話しをしている間も、お地蔵様は次々に道ばたに置いてある。
気味悪がる3人に、運転をしていたC君は『そんなの農道なんだしなんか意味があってお地蔵様を角、角に置いてるんじゃねーの』と言いました。
とりあえずそれで納得しようとした所でようやくその農道が終わり、大きな道へ。
ほっとしてほどなく、目的地の九十九里に到着しました。
さっきまであんなに気味悪がっていた4人でしたが、そこは若者、そんな事すぐに忘れてはしゃいでいました。しばらくして夜の真っ暗な海、特にやることもなくなり、早々帰ることにしました。
帰り道、さっきの道は嫌だという事になり、少し遠回りでしたが違う道を選んでその日はそのまま帰路につきました。
それから2、3週間後、夫はまた友人3人と夜中まで遊んでいました。
ただその内の1人は先日海に行ったのとは別の友人。
そこで夫とA君、運転をしていたC君は、その友人にその時の『お地蔵ロード』の話をしました。
そうするとその友人は面白がって自分も行きたいと言い出しました。
ちょっとためらったのですが、ヒマだったのでまた海を目的地に4人で向かう事になりました。
先日と同じように車で4人ワイワイ、そしてついにその農道にさしかかりました。
『ここだよ!お地蔵ロード。マジでいっぱあるから!』
真っ暗な道に街灯がぽつぽつとあるその道を走りながらお地蔵様を見つけようと、みんなで窓の外に目を凝らしました。
ですが、いつまでたってもお地蔵様は出てこないのです。
『おかしいって、道間違ったんじゃない?』とA君が言いましたが、『いや絶対この道だよ、1本しかないから』と、地図係の夫。
運転手C君も、『うん、だってこの看板あったもん、俺覚えてる』と道ばたの看板を見て言いました。
しかし結局そのまま1体のお地蔵様もないまま、この農道が終わってしまい、とりあえず目的地の海に到着しました。
しかしながらつい2、3週間前にあんなにあったお地蔵様が1体もなかった事はさすがに気持ちが悪く、4人とも車を降りて海に行く気にもなれず、そのまま帰る事にしました。
帰りにまたその『お地蔵ロード』の入り口まで来てみましたが、やはりここを通る気になれず、
『絶対この道なのにな…』と先日のお地蔵様を見ていた3人は釈然としないまま、違う道で帰りました。
その後、夫はその『お地蔵ロード』には行っていないそうです。
その道がどこにあるのかもう忘れてしまったそうですが…
ただどう考えても不思議で、今でも鮮明に覚えているそうです。