俺が大学の時の友人Aから聞いた話。
俺が大学の時の友人Aから聞いた話。
Aが行っていた高校では、入学して数ヶ月経ったあたりで
山奥にある学校関連の施設に行き、みんなで一晩過ごすという林間学校みたいな行事があったらしい。
まあ、自然とふれあいながらクラスのメンバーとも親睦を深めようみたいなイベントだ。
しかしこの宿泊施設というのがひどいものらしく、建物が恐ろしくボロい上
電気も水道も満足に通わないほどの人里離れた山奥にあり
このイベント自体、生徒達からの評判は決していいものではなかったようだ。
そんなこともあってか、この施設には妙な噂があった。
昔この施設を建てる際、工事が難航したため人柱として数人を地面に埋めたというのだ。
いくら何でも江戸時代の建物じゃなし、そんなアホな話があるかって感じだが。
実際、先輩が後輩をおどかすための噂話みたいなもので、誰も本気で信じてはいなかったらしい。
当日、Aは初めてその施設というのを見たわけだが
確かに相当古く、こりゃあ怖い噂が広まるのも無理は無いって感じの建物だったらしい。
人柱の話を聞いていたから自然と地面に目が向くが、おかしな点は何も無い。
Aは「何本もある短い柱で土台を支えてる、高床倉庫を低くしたような床やった」と言っていたから、
多分大きなバンガローみたいな建物だったんじゃないかと思う。
昼間は飯盒炊さんやら何やらがあって、さて夜になり寝ようかという頃になって霧が出てきた。
いかにもホラーな感じで怖えなと言い合っていたら、肝試しに外を歩いてみないかと言い出す奴が現れた。
この施設には、備え付けのトイレとは別に、本棟から離れた場所にもう一つ小さなトイレの建物がある。
そこへ行くには夜道を歩く必要がある。
当然、こんな夜になってわざわざ電気も無い離れのトイレを使う奴はいない。そこへ行こうというのだ。
結局、そいつとAを含めた計4人のグループで、そのトイレまで歩いて行くことになった。
施設の玄関についたボロい電灯以外、明かりは無い。懐中電灯で前を照らしても、濃い霧のせいで数メートルくらいしか先が見えない。
そんな中を歩いていると、どこからか「チリン……チリン……」と、鈴のような音が聞こえてくる。
自販機もないのに、小銭を持ってきている奴がいるわけもない。
Aは奇妙に思っていたが、不思議と周りの友達は気にも留めていない。
だが懐中電灯の光がトイレを照らし出すあたりまでくると、その音は聞こえなくなった。
4人でジャンケンをして、負けた奴が中に入って用を足してくるということになった。
一人が中に入っている間、Aはあの鈴のような音について聞いてみた。
しかし、なぜか2人ともそんな音は聞こえなかったと言う。
あの程度の音であれば少しも聞こえないということはないはずだと言っても、二人は聞こえなかったの一点張り。
そうしているうちに、トイレに入っていった奴がおびえながら出てきた。
「お前らふざけんなよ!俺が中にいる間、ずっと鈴チリンチリン鳴らしながらトイレの周りをぐるぐる歩き回っとったやろ!」
当然、外の3人は周りを歩き回ったりはしていないし、その間鈴の音なんか聞いてもいない。
4人は震え上がり、霧の中を宿舎まで逃げ帰った。
玄関の電灯のところまで来てやっと人心地がした。
だが、Aが建物に入るときにふと地面に目を向けた、ちょうどその瞬間、
明かりにわずかながら照らされた、床を支える柱の影からこちらを睨んでいる「何か」と目が合った。
これが身体から下を埋められた人間の頭とかだったらいかにもで怖いんだが、
Aは「暗かったからよう分からんかった。もしかしたら動物かもしれん。そうであってほしいわ。」と言っていた。
この当たりが妙にリアルで印象に残っている。