彼女Aと同棲していた頃の出来事…。
夏になったら思い出す。
彼女Aと同棲していた頃の出来事…。
ある川の花火大会にAと行った。
花火はとてもきれいで、二人でキャッキャウフフした。
そんないい雰囲気から一転、帰り道でAは突然不機嫌になり理由を聞いても答えない。
自分が何かしてしまったのかと思ったが理由がわからないから謝りようもなく、こちらもイラッとして別々に電車に乗って帰宅し、そのまま寝た。
翌朝も無口だったのでほっといて仕事へ。
帰宅しても不機嫌なまま。
翌日も同じだった。
しつこい奴だと思っていたが、Aは日を重ねるにつれみるみる元気がなくなってゆき、目の下にクマがくっきりと出た。
これは何かおかしいと、部屋の隅で体育座りしてふさぎ込んでいるAに、どうしたのか聞いてみた。
A「家に小さい女の子がいる。花火の日についてきた。」と言う。
Aに霊感があるのは前々から知っていたので、小さい女の子がクマの原因であることは理解できた。
俺には見えないし感じられないその女の子を、なんとか祓おうと俺は躍起になった。
肩に塩を振ったり、玄関に盛ったり、お経を唱えたり…いろいろとやってみた。
A「家の中を走り回ってる」
効果がなかった…。
俺「仕方ない、今度の日曜に川にもう一度いこう。なにか手がかりがあるかも。」
そうして日曜日、二人で電車に乗って花火大会のあった川に向かった。
ほどなく駅に到着し川まで徒歩で移動中、Aが突然立ち止まった。
A「ここからついてきた」
確かここら辺からAの機嫌が悪くなったのを思い出した。
Aの視線の先には花火の夜には全く気がつかなかった水子供養のお寺があった。
そのお寺は線香が絶え間なくたかれ、沢山のろうそくが灯されていた。
大小様々な地蔵が建ち並ぶ光景は異様であり立ち入るのをはばかられた。
入り口で立ち入るべきか悩んでいると、脇から一人の女性がお寺に入っていく。
線香を供え手を合わせ佇む女性の姿を見ていると、幼くして先立った我が子への想いが伝わってくるようななにか切ない気持ちになった。
そのせいか先程の異様と思えた光景が全く別物に見えて、すんなりとお寺に入ることができた。
二人で線香を供え手を合わせる。女の子にここへ帰るように心の中でお願いし、しばらくして二人同時に顔をあげた。
A「あ、なんか軽くなったよ!」
そう、うれしそうに言うAの顔を見てビックリした。
クマがキレイサッパリ消え、生気のなかった肌もツヤツヤで笑顔が戻った。
あの小さな女の子はなぜAについてきたのだろう。
なにか伝えたかったのか。
生前はどんな子だったのか。
そんな会話をかわしながら帰途に就いた。
霊なんて嘘つきかメンヘラだろうと思ってたけど、この一件は霊の存在を信じるに足る出来事でした。