私が、今現在でも、トラウマになっている体験…
私が厨房の頃、自宅の一番奥の寝室に使っていた和室で、畳の上に横になって昼寝していた。
確か、夏休みの最中で、プールへ行って、疲れて帰ってきた後だったと記憶している。
当時、自宅で唯一冷房のある部屋だったんで、そこで冷房効かせて寝ていた訳だ。
目が覚めて起きようとしたんだが、目は開いているのに身体が動かせなかった。
(おおっ、これが噂に聞く金縛りか)
その時は、初体験だった事もあって、寝ぼけた頭で、そんな風にのん気に考えてたんだ…
カサカサカサ…
突然、耳元で畳を引っかく様な小さな音が聞えた。
ギョッとして起きようとしたんだが、話に聞いていた通り、指一本動かせない。
カサカサカサ…
目だけ動かして音のする方を見てみたが、何も見えない。
それ以前に、私は目が悪くて、寝るときにはメガネ外していたから、視界がぼやけてよく見えない。
そうこうする内にも、音は段々と近づいてくる。
(うわっ?!)
ついに、耳に何かが触れた。硬い感じの細い物…何というか、木の枝みたいな物で引っかかれた様な感じだった。
その嫌な感触が、耳から徐々に這い上がるようにして顔の方へと上ってくる。
もう、心臓バクバクで、冷房効いてる筈なのに、汗びっしょりになっていた。
(qあwせdrftgyふじこlp!!)
顔の上を黒い物が通過した。その黒い物がその音と嫌な感触の主である事は明らかだった。
その黒い物の正体に気が付いた瞬間、汗が一気に引いていった。
頭の中では、恐怖と嫌悪にパニックになっているにも関わらず、身体は動いてくれなかった。
カサカサカサ…
やがて、その黒い物は、私の顔の上を通過し、だんだんと遠のいて行った。
ややあって、金縛りが解けた瞬間、私は跳ね起き、洗面所へと駆け込んでいた。
とにかく、必死で顔を洗う。
そんな私の様子に、お袋が怪訝な顔をして何かあったのかと聞いてきた。
暫く沈黙した後で、ポツリと答える私。
「いや…ゴ○ブリが顔の上、歩いてったんだ」
お袋、大爆笑。いや、そりゃ笑う気持ちは判るけどね…当人は、ホントに恐かったんだよ…。
それ以来、私は、ゴキ○リが大の苦手になってしまっている。