で、中学生の頃もまだそれひきずってましてね、大好きだったんですよ警察官。
自分どっちかっつうと悪餓鬼だったんでなんとかパトカーに乗ってみたくてね。
ある一計を企てて実行にうつしたんですよ。
深夜に今でいう走り屋とかが出んで取り締まりに毎日パトカーが巡回する道があったんです。
そこでパトカーくるまで待ってました。
パトカーが見えたら両手をばたばた上げて助けを求めるんですよ。
「何!?君どうしたの! 大丈夫!?」
おまわりさんが二人出て来まして、そのうち年配の方が血相かえるんです。
「…道歩いてたら、斬り付けられた! でも切れてないどうしよう!」
一計ってのは落ち武者の亡霊に襲われたことにして自宅まで送ってもらおうって内容。
結構凝ってて、動転した人間が過呼吸起こすとか目を見開いて瞬きが減るとか。
そういうあたりまで徹底して演技。
「どんな人!? どこにいったのそいつは!」
「切られたんだけど刀が素通りしてった、そしたら消えちゃった。…鎧来た武者みたいな姿でした。」
「武者ぁ…? …とっ…とりあえず、分かった。 君、家どこ?送るから。」
こんなかんじでまあ見事目論見成功しました。
でパトカーの後部座席に乗せてもらって、落ち着きを取り戻すまでの演技。
終わったら大好きなおまわりさんと色々話をしてたんですよ。
でもそのうち自分が凄く仕事の邪魔してたことに気づいて申し訳なくなってきて。
「そういえば、おまわりさん達。僕の事迷惑じゃないですか?」
「達? いや一人だけど。」
ぎょっとして隣の座席見てみても、ちゃんといるんだ。
「え、だって隣に…。」
「車とめて助手席乗せてあげようか? 本当にいないんだよ。」
笑ってこういうおまわりさんをミラー越しにみつめて首ひねったよ。
したらさあ、助手席に座ってるおまわりさんがゆっくり振り向いて。
頭の中ですごく優しげに諭すような声がした瞬間透けて消えてしまった。
言われたとおり実は狂言だったと謝った後に、
でももう一人の事はは嘘じゃない、その人に謝りなさいって言われたんだと主張してみた。
最初は怒ってたし懐疑的だったけど、特徴まで覚えてる限り話してみたら、
おまわりさんがちょっと目をうるませた。
「ああ、そりゃタツだなあ、俺の息子だよ。
やめとけばいいのに警察入って、公務中に事故で死んでしまったんだ。
…いいこと教えてくれてありがとな。差し引きゼロで今日のことは内緒にしてやる。」
大きくなった俺。
警察官になる夢は馬鹿で試験落ちちゃって絶たれたけど、かわりに警備員やってる。
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