電気も水道も止めて貰ってたので、色々手続きが面倒だった。
私と義妹で家の片付け、夫と義弟がご近所さんへの挨拶回り。
昔庄屋だった義実家は、戦前は何人も奉公人が住み込んでいただけあり
部屋数も多く、とにかく広い。
「うちでは管理しきれないわ」
「うちも無理だわ、遠いし」
「処分するしかないわね」
「でも主人達にとっては生家だし、なんて言うかしら」
「そうね~」
等と言いながら、とにかく家中の雨戸と窓を開けていると電話がなった。
昔ながらの黒電話だ。出てみると聞き覚えの無い声で
「お戻りだったのですね。お待ちしておりました。これから伺います」
と言われた。どなた様でしょう?と聞いたのですが相手は答えず電話を切ってしまった。
夜には帰るつもりだったので、義妹と慌てていると夫達が帰ってきた。
電話の事を話して、心当たりを尋ねると義弟が笑って言った
「義姉さん。真面目な顔で何言ってるの?その電話はどこにも繋がってないよ」
10年前に子機付きの新しい電話機に換えた時に、線も引き直したんだよ、ほら、と
黒電話のコードをたぐり寄せた。電話線は途中で切れていた。
凍り付く義妹と私の前で、その黒電話が鳴り出した。今度は四人とも凍り付く。
「来るって言ったのか?」
と夫が言った。義妹が泣き出し、四人で戸締まりもそこそこに車に飛び乗った。
それ以来、義実家には帰っていない。処分は業者に頼んだ。
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