怖い話

【恐怖体験談】トンネルで出会った6人

586: 短くしてみた 2010/09/05(日) 20:37:39 ID:4VKz7JIe0

20131121b

 

俺にはオカルト好きのてっちゃんとぎゅうじというあだ名の親友が二人いる。

「なぁ、こんな話知ってるか?」
てっちゃんの家でゴロゴロしていると、親友の一人のぎゅうじがそう言った。

引用元: 死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?248

こいつは怪談話が好きなやつで、どこかで聞いたことあるような話や
都市伝説を嬉々としていつも話してきた。
今日のお題は俺たちが住んでいる市にほど近い場所のうわさ話で、
今は廃墟になった小料理屋で昔惨殺事件があり、
そこで殺された人の怨霊が、その近くの廃トンネルに出るというものだった。
「いいねぇ、じゃあ後でそこ言ってみようぜ」ともう一人の親友のてっちゃんが言った。
「じゃぁ俺準備するわ」
そう言ってぎゅうじとてっちゃんが用意し始めた。
用意が出来ていざ出発しようという頃には、夜の十二時を回っていた。
駐車場に止めてるてっちゃんのぼろぼろの軽自動車に、運転席にてっちゃん、
助手席に俺が座り、ぎゅうじは荷物と一緒に後部座席座った。

目的は埼玉県に隣接する東京のはじっこの市だ。
僕らの住んでる市からはそう遠くないが、それでも入り組んだ目的理のトンネルまでは
たっぷり一時間以上はかかった。
「ついたそ」っと言って、山道の安全地帯にてっちゃんは車を止めた。
「この獣道みたいなところを登ればすぐだよ」
てっちゃんはそう言うと、懐中電灯の明かりをたよりに一人で歩いて行った。
バックからもたもたもうひとつ懐中電灯を取り出すぎゅうじを待って、
俺もてっちゃんの後追った。
そこは獣道と呼ぶには道幅が広かったが、傾斜と泥と落ちた木の枝のせいで
ひどく歩きづらかった。
途中噂の廃屋に立ち寄ったが、真新しいゴミが散乱し雰囲気を損ねていたので
すぐに目的のトンネルに向かった。

目的地のトンネルは、廃屋から数十メートル程進んだところにあった。
入口は何重にもフェンスと有刺鉄線で囲まれ、入口の扉には南京錠がかかっていた。
しかしフェンスと有刺鉄線は先人に切断され、南京錠はどうやったのかわからないが
外れてぶら下がっていた。
てっちゃんはさっさとフェンスと軋む鉄製の扉をこじ開け中に入って行った。
僕とぎゅうじも今度は遅れずにそのあとに続き中に侵入した。

 

587: 本当にあった怖い名無し 2010/09/05(日) 20:39:14 ID:4VKz7JIe0

トンネルの中は石がむき出しになっていて、方々から染み出す水のせいで
どこもかしこも水浸しだった。
その様子から、このトンネルは岩盤をくりぬいて作ったのだと僕は想像した。
「おっ、ここ座れるな」
てっちゃんはそう言うとトンネルの中ほどで小高く盛り上がり、水につからず
乾いている地面を懐中電灯で照らした。
その場所に着くとぎゅうじがバックからビニールシートを取り出し、その中央に
長い蝋燭を立て火をつけた。
しばらくそうしていたが、、「しぃ!ちょっと静かにして!」とぎゅうじが声を殺して言った。

俺は本当に何か出たのかと思ってこわばり、てっちゃんは逆に目をきらきら輝かせて
あたりをきょろきょろと伺っていた。
「……ジだって……けるよ……き、へいき……」
その声は僕らの入ってきた入口のほうから聞こえた。
その声に僕は胸を撫で下ろし、てっちゃんは「ちっ!」と舌打ちをした。
明らかに心霊スポットに肝試しに来ている後続組の声だった。
しかも声から察するに、男女が複数いるようだ。
ふと気がつくと、てっちゃんにぎゅうじが何やらこそこそ耳打ちをしていた。
そしてにやっと笑い目を見合わせた二人は、ふっと蝋燭に息をふきかけ火を消した。
あたりに漆黒の闇に覆われ、時折たれる岩清水の音と、
後発組のかすかな声だけが聞こえていた。

やがて後発組の懐中電灯の光がトンネル内を照らし始めた。
「超怖いんだけどー幽霊」 「マジ余裕だから俺」
と後発組の声が聞こえ始めた瞬間、

「う お お お お お お お ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ!!!!!!!」

とトンネルがビリビリ震えるほどの大声が響いた。
『ギャー!!!!!!!!!!!!!!!』
と後発組がバタバタとにげる足音が聞こえ、僕が何が起こったのがわけもわからず
唖然としていると、
『大~成~功~』
と言ってハイタッチをしている二人がいた。
「可哀そうだから種明かしに行こうよ」
俺がそう促すと、二人は腹を抱えて笑いながら、ビニールシートを片付け立ち上がった。

 

588: 短くしてみた 2010/09/05(日) 20:40:46 ID:4VKz7JIe0

僕らがトンネルから出ると、入口に女の子が一人、
その先の道に女の子がもう一人、そのさらに先の廃屋あたりに四人ほどがいるのが見えた。
「大丈夫?」
そう手を貸し入口の女の子に近づくと、「え?マジ?人間?」とその子は言った。
「ごめんごめん」と俺はその子にヘラヘラ笑いながら謝り、
尻もちをついているその子を起こしてあげた。
てっちゃんとぎゅうじは残りの人ところに歩いて行き、ことの説明をし始めた。
後発組は全部で男女6人で、どうやら恋人同士3グループで遊びに来たようだった。
十数分かけててっちゃんが事情を説明し終わると、「マジビビッたし」と言いながら
全員が安堵の溜息を吐いた。
その後談笑タイムが始まり、 ここじゃなんだから、道を下ったところにあるファミレスで
少ししゃべろうということになった。

落ち着いてから行くというので、とりあえず携帯番号だけ交換し、
俺達三人は先にその場を後にした。
けもの道の途中に真新しいピカピカの軽自動車がとまっていた。
どうやらあの六人組はこの車でここに来たようだった。
狭くて俺立ちは断念した道を、この暗闇の中よく登ってきたもんだと思った。
そうして俺たちはまた先ほどと同じ座席に座り、道を下ってファミレスに向った。

道中車内でドッキリの成功に沸きながら、あの子がかわいかったとか、
あの子は少々痩せすぎだとか、
ガキのくせに車持ってるなんて生意気だとか談笑していると、
ぎゅうじがこう言って首をかしげた。

「ところで俺達三人とバックだけでも軽だときついのに、
あいつらはどうやって六人もあの車に乗ってきたんだろうな?」

「そりゃぁお前……」
そこまで言って俺もてっちゃんも言葉に詰まった。
そして僕らはファミレスによらずにそのまま猛スピードでてっちゃん家まで帰った。
結局その後携帯に着信はなく、 こちらからかけても、
彼らは電波の届かないどこかに今もいる。

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