おれの先輩
週末は駅でナンパするのが日課だった その日はすぐにかわいい子が釣れて、ドライブをしていた
どういうわけか人気のないところに行きたがる まあ好都合か、と希望通り車を走らせた
夜は絶対に人のこない駐車場 先輩のとっておきの場所だった
車を停め会話をしていると何の前触れもなく突然、
女が二本の指で先輩の両目を突いた
不意のことで両目を直撃した先輩は、あまりの事に我を失った
ビニールのひものようなものが首に巻かれ、絞められた
先輩は抵抗するが、ものすごい力で、振りほどくことが出来ない
先輩が負傷しているということを差し引いても、女とは思えないすさまじい力だった
必死に抵抗する中、手に触れたキーケースを取り、一本のカギを女の脇腹に突き立てた
ギッ
と女が呻き、力が緩んだスキに女を押しのけ車外に出た
そのまま振り返ることもなく走って逃げたそうだ
その場所と一番近かった俺の部屋に飛び込んできて、一部始終を話した
首にはくっきりと紐の跡が残り、右眼の瞼は深く切れていた
あまりの事に、警察や病院に行った方がいいのではと言ったが
状況が状況だけに、あらぬ疑いをかけられたら困る、といい届けようとはしなかった
しかし、車を置きっぱなしにしているのはまずい、とのことで、
友達を呼んでそいつの車で三人で駐車場へ向かった
先輩はひどく怯えており、バットを握りがたがた震えていた
車はそのまま置いてあった
車内は抜け落ちた女の髪や血痕が残り、本当だったのか、と驚愕した
車に置いてあった公共料金の払い込み票が消えていたそうだ
先輩はその日から自宅に帰らなくなった
引っ越し代が出来るまで、と言い事情を知る俺や友達の部屋に居候した
結局女が現れることはなかった
一番怖いと思った話です