怖い話

【ほんのり怖い話】廃業した民宿で「探検ごっこ」をしていたときの話

914: 本当にあった怖い名無し 2011/09/19(月) 23:29:19.33 ID:E6SC566x0

ほんのりと投下させてね。

小学生の頃の話。今から20年ちょい前。

20151021a


俺の地元の奈良に「釜風呂」が名物の民宿があった。

「釜風呂」ってのはサウナの一種で、
薪を掘り込む穴みたいなもの。「かまくら」みたいな感じ。
その珍しさもあり創業当時はずいぶんと繁盛したらしいが、
町自体がベッドタウン化、住宅やマンションが次々と乱立。
もはや観光地ではなくなり、民宿自体もさびれていった。
その民宿も、俺が物心つくころにはすでに廃業していた。

坂の頂上にあったその民宿は廃業してからもしばらくは
残っていたんだが小学生の俺らの間で流行っていた
「探検ごっこ」のターゲットになった。

周囲にフェンスはあったものの、簡単に登れる高さだったんで
その建物に入るのは、当時の俺らでも楽勝だった。
夏休みの昼下がりだ。

雑草をかき分けて進み、木製の引き戸の玄関にたどりついた。

俺らのメンバーは俺、A、Bの3人。「せーの」で引くと、
驚くほど簡単に引き戸は開いた。

埃っぽくはあるが、室内は意外に広々としていた。
窓際は雑草に覆われているので全体的に暗い。
が、目視で十分に足りる明るさ。

名物の釜風呂もしっかりと残っていた。
5つほど並んだ釜風呂にはそれぞれに戸がついていて
そのうち半分くらいはすでに壊れていて中が丸見えだった。

 

915: 本当にあった怖い名無し 2011/09/19(月) 23:31:49.74 ID:E6SC566x0

それを横目に1階部分を順番に散策。思ったよりも怖さがなく、
少し拍子抜けした。

その後、階段から2階にあがる。2階は客間が3部屋ほど並んでいた。
2階は1階よりも自然光が入る分、明るい。
最初に入った部屋で、奇妙な光景に出会った。

客間の真ん中にある机の上に、朝食くらいの品数を載せた
お盆が2つ並んでいる。
その上に、サランラップがのせられている。Aが確認しにいった。

「新しい…。だって、水滴がついてるもん」

その時、1階から「バーン!」と扉を閉めるような音が鳴り響いた。
そして、ギシギシと廊下がきしむような音が聞こえる。

俺たちはパニックになり、2階から木を伝って脱走。
振り返ることもなくフェンスによじ登り、一目散に逃げた。

それから1年後くらいに、その民宿は取り壊された。
今はマンションが建っている。
ただ単に、浮浪者が住んでいただけかもしれない。
が、電気もガスも水道も、当然ながら止まっていたハズだ。

今思えば、誰かが誰かを匿っていたのかもしれない。
その場合、隠れている者にとってうってつけの寝床は、
釜風呂の中だ。

あのとき、閉まっていた釜風呂の戸を開けなくてよかったと思っている。

 

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