俺は勢い余ってか、叩きつける角度をしくじってしまい、
スーパーボールは細い川と道路を隔てた向かいの浄水場に入ってしまった。
俺たちは恐る恐る浄水場に忍び込んだ。あたりに大人の気配はなく、ざあーという水の流れが遠くで聞こえるだけだった。
引用元: ・死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?225
流れはそれほど速くなかったので、何メートルもあろうかという底まで見ることができた。
俺たちはスーパーボールのことは忘れて、とてつもない深さに恐怖しながらも、身を乗り出して中を覗いていた。
妄想ぐせのある俺は、ここに落ちたら底まで吸い込まれて溺れ死ぬんだろうなと考えながら、
どんよりした膨大な水の流れるのを眺めていた。
友達が下に何か見えると言って底の方に指を差した。よくみてみると、確かに何かもやもやとした白いものが沈んでいた。
しかし深過ぎるためにはっきりとしなかった。俺たちは始め、浄水場の設備だと思い特に気にかけなかったが、
それを見ていた友達が急に「大きくなってる」と叫んだ。
たしかに白いもやもやは大きくなっていた。そしてそれが布きれのようなものであることが見て分かった。
ゆっくりふわふわと水の流れの中を上に上にとあがってきた。
みんなしばらくその布を夢中になって目で追っていたが、
水面まであとちょっとのところで止まってしまいそれ以上はあがってこなかった。
なんだろうと二人で疑問に思っていたところ、友達がその場から離れ、しばらくして木の枝を拾ってきた。
友達が手を伸ばして枝でその布をすくいあげようとしたところ、友達は水の中に落ちてしまった。
俺は慌てて友達に手を伸ばしたが、友達はパニックになり腕をばたばたさせるのがやっとだった。
友達は水を蹴って水面に何度か顔を出して息継ぎをしていた。俺は何かおかしいと思い、
友達の足下をよく見てみると、白い顔をした男の人が友達の足を掴んで引きずり込もうとしていた。
俺はおびえて逃げだし、水溜を抜けて大人のいそうな建物に入って泣きすがった。
異常を察した浄水場の人らは、友達のもとへ駆けつけてくれたが、
そのとき友達は大量に水を飲んでぐったりして仰向けに浮かんでいた。
彼らがすぐさまボートを出して助けようと友達を引き上げ仰向けにしたところ、
彼の喉には白い布が詰まっていた。
友達はなんとか一命を取り留めたが、未だにあの恐怖が忘れられない。
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