7年前の高2の夏休みのことになる。
夏休みになって一人、京都に旅行に行った。中学の時に修学旅行で行くはずだったが
当日の朝、家を出て100mしないところで車にはねられ(ガチ)、行けなかったので
夏休みを利用して行くことにした。
そんなわけで新幹線利用して京都まで行った。意外と近代的だなと思った。
旅館に行くと同い年くらいの可愛い女の子の仲居さんが部屋まで案内してくれた。
聞けば旅館の主人の娘さんで年齢は自分より一つ年上。
東京から来た事と中学の修学旅行の事を話したら、明日は京都の観光案内をしてくれると
言ってくれた。
そんなわけで次の日、京都案内をしてもらった。
金閣寺、銀閣寺、清水寺、太秦村、北野天満宮、平等院、二条城とかいろんな場所を案内してもらった。
最後にどうしても立ち寄りたかった場所があった。本能寺だ。
意外にも本能寺はこじんまりとしていたが一応、寺のようなものがあった。
目当ての信長廟を見つけ持参していたカメラに6つ目のフィルムをセットして信長廟を撮影しようとしたとき、
いきなり後ろから首を絞められた。
何かを首に強く当てられ気管を圧迫している。
最初は案内してくれている娘(以下U子……もとい、U)が冗談で絞めていると思った。
しかし、どう考えても首に押し付けられている力は相手を殺す力だった。
じゃあ一体、誰が自分の首を絞めているのか?苦しくなってカメラを落としてしまう。
そんなことを思った矢先に後ろから声がかかった。
「ねえ、大丈夫?」と。
Uのこえだった。その声はどう後ろから首を絞めている人間の距離より遠い場所からした。
しかし、その言葉からすると自分の首意を絞めている人間はUに見えていないということになる。
そんなことを考えているうちに肩に手が置かれた。Uの手だった。
「ねえ、本当に大丈夫?」かなり焦った声だった。
(後から聞けば自分はいきなりカメラを落としたかと思うと、爪先立ちになって肩より少し上の所で何かを掴んでいるような
恰好をして苦しんでいたらしい)
肩に手を置かれる状況から考えるに自分の後ろには誰もいないことを考えた。
そして、自分の首を絞めているのは信長の亡霊的なものかもしれない、なんて考えが頭をよぎった
とりあえずUを離れさせることにした。
首を絞められて、ちゃんとした発音はできなかったが。ちゃんと言えた。
「U、さわるな」
(この時、焦っていたためか年上のファーストネーム呼び捨て)
言い切った途端、気管を圧迫するしていたものがいきなり無くなった。
爪先立ちだったのでそのまま後ろに倒れてUにもたれかかってしまった。
結局、そのまま宿に帰ってから一部始終をUに話した。
Uは驚いたようだったが、信じてくれた。本能寺ではそんな話がごまんとあるらしい
カメラは結局レンズに盛大なひびが入り写真を撮ろうものならひびの写真製造機になっていたはずだった。
フィルムは信長廟でいっぱいだった。信長廟を撮ろうとしてしたが、自分はシャッターを一度も切っていない。
もしかしたら、落ちた拍子にシャッターが切れたのかもしれない。
しかし、フィルムには寸分たがわぬアングルから撮られた信長廟が全コマに移っていた。