この話だと呪いの方向性を決めて間引かれた子供達の怨念を制御するためらしい
子取り箱の原型となったのは仙人達が使ったとされる呪術の一種
それもとびきりヤバい呪術で、ソレを人間でも扱えるように簡略化して子取り箱になったらしい
元々の呪術の方法ってのは割愛する(ていうか明確な方法は分からない)けど
日本で作られた子取り箱の中にソレに近い方法で作られたモノがあるらしい
コレは子取り箱が作られていた部落のうちのある1つの部落の話
その部落に1人の少女がいた、その少女はとても優しく可愛らしい少女だったけれど、
9才の時に病に侵された事が理由で間引かれて子取り箱の贄にされる事になった
その時、その少女を手にかけたのがその少女の母親だったんだけど、
情のせいかただ運が悪かったのか、少女はすぐには死ねなかった
少女はその時子取り箱の作成に携わっていた三人の男が子取り箱の作成の為に背を向けている間に
這いずりながら見よう見まねで作りおきしてあった匣に自分と一緒に
間引かれた子供達の体の一部を入れていった
少女がなんでそんなことをしたのかは分からない、子取り箱の作成過程を
間引かれた子供の供養の儀式と勘違いしたのかも知れないしやっぱり間引かれた事を恨んでかもしれない
その時作られていた子取り箱はサンポウとチッポウ、少女は間引かれた子供全員分のパーツを匣に積めた
しかし匣に蓋をする前に男の1人が気付き慌てて少女を刺して今度こそ本当に少女は息絶えた
男達は部落の大人を集め、少女の作った匣をどうするか話し合い、
蓋をして部落の外れにある林の奥に埋め、子供達に決して近付かないように伝える事にした
その数年後にその部落に1人の少女が迷いこむ
ある青年の家を訪ねた少女は「山の中で迷ってしまいここにたどり着いた、
うちに帰りたいが暗くなってから山に入るのは怖いので一晩だけ泊めて欲しい」と言った
本来なら追い返している所だが青年にはソレが出来なかった
その少女は幼い頃に好きだったけれど、病気で死んでしまった少女にあまりにもソックリだったから
納屋でも構わないという少女の嘆願を断りきれなかった青年は一応父にも確認を取ろうと少女を
父の所につれていくが、少女の顔を見た父はいきなり怯えだし
好きにしろとだけ言い残し家の中に籠ってしまった
青年は不信に思ったがとりあえず少女を納屋に案内した
その日の夜、青年が物音で目が覚めると納屋の方から音がする
少女に何かあったのだろうかと窓から納屋の方を見ると丁度少女が納屋の戸を開け出てくる所だった
厠かと思ったが少女はそのまま林の方へ向かって歩いていってしまった
不信に思った以上に少女を心配した青年は少女を追いかける事にした
少女が通った形跡を辿っていくうち、青年はここが絶対に近づいちゃいけないと言い聞かされた林だと思い出す
青年は少女を見つけその事を伝え連れて帰ろうと少女に声をかけようとしたが、
少女が立ち止まり地面を見つめている事に気づく
そのまま少女はその地面を手で掘り始め、しばらくして1つの匣を堀り当てる
そして急にこちらに振り向くと微笑みながら言った
「遊ぼ」
少女は匣をこちらに向けながら徐々に近づいてくる
青年は不気味さを覚え逃げ出そうと思ったが体が動かない
少女が至近まで近付き匣の蓋をあける
青年はその匣の中を見て悲鳴をあげてしまった
子供達が9人、こちらをじっと見詰めていたから
匣から目をそらそうと顔を上げた青年は更に悲鳴をあげる
さっきまでの菫の花のような可憐な微笑みをしていた少女の顔が無くなっていたから
両目、鼻、口、本来あるはずのぱーつが全て無くなっていたから
少女は笑っていた、顔がなくても笑っているのが分かった
少女の顔に付着している血が笑っている口の形を作っていたから
持ってきていた明かりはもう落としてしまっていてよく見えないはずだがその事はハッキリと分かった
青年はここにきてやっと目の前の少女が数年前に死んだあの少女だと確信する
同時に自分はここで憑り殺されるのだと
だから青年は叫んだ、少女の名前と助けてという言葉を
名前を呼んだ瞬間、少女の動きが止まる
そしてそのまま匣の蓋を閉じて顔も元に戻る
そして「ないしょ」とだけ言い残してどこかに消えてしまった
しばらく青年は立ち尽くしていたがふと我に帰り明かりを拾い家に戻る事にした
林から出て部落の方に戻ると大人達が何人か集まっていた、どうにも自分の悲鳴で目が覚めたらしい
父が村人達に例の少女の事を話していた、きっとあの娘が復讐しに来たのだろうと
そして青年は聞かされた、子取り箱の事、病死した少女の事
大人達は青年に何があったか訪ねたが青年は話さなかった、少女がないしょと言ったから、
もし話したら自分をまた殺しに来るかも知れないと思ったから
そして翌日、大人達が例の場所を掘り返してみると例の匣は無くなっていたらしい
そして更にその後一週間の間に3人が死んだ、青年の父と他に大人が二人
死因は不明、ただ全員体の一部が無くなっていたらしい
それ以降、この部落では子取り箱は作られなくなったという
ここまでだとただの昔話だけどこの話には続きがある
というかここからがヤバい部分でここまで読んだなら最後まで読まなきゃならない
この青年は死ぬ間際までこの事を誰にも話さなかった
だけど病に臥せり自分の死期を悟ったときになってどうしても少女の事が気になっていたため、
息子や孫達にこの話をしたらしい
そしてこの話は息子や孫達からその地域の数人に伝わりそこから更に広がった
そしてその話を知った人間の半数が体の一部を失って死んだ、全員死因は不明
そして残りの半分は全員例外無く少女の幽霊に襲われた証言した
生き延びた彼等の共通点は襲われた時に少女の名前を口にした事
この話がホントかどうかは知らない、信じなくてもいい
ただ最後に1つ、確証はないと書かれてたけど少女の名前は「すみれ」というらしい