久しぶりに思い出したので。
今から数年前、私が中学生だった時の話です。
学校の遠足で、東京の方にいくことになりました。
クラス内で何班かに別れ、私の班は、男子が三人、女子が二人、それと私の六人。
この時の遠足は、自分たちで見たい場所を選び、見学コースを決められます。
しかし午前と午後で絶対に見学しなくてはいけないチェックポイントのような場所があり、見たい場所は余った時間でねー、という形でした。
当日、私達は午前のチェックポイントに予定より早く着いてしまい、見学する建物の開館時間まではまだ少し時間がありました。
せっかくの遠足なのにただじっと待っていられる訳もなく、私たちは建物のまわりを散歩して時間を潰そうと歩き始めます。
班もクラス内で仲のいいメンバーが揃い、テンションが上がっていた私達は近くにあったお堂?のような建物に入ることにしました。
中は思ったより広く、前には祭壇と積み上げられた大量の箱(縦にも横にもたくさんありました)、横の壁には震災や戦争の被害の写真が貼ってありました。
ぐるぐると写真を見回っていると、私たちが入ったのとは別の入り口から寡黙そうなおっさん(40代ぐらいかなあ、もっといってたかもしれない)が入ってきました。
ちょっとビビりましたがそのおっさんは写真の説明をしてくれたり、よかったらロウソク立てていってねみたいな事を言ってくれました。
おっさんの説明でわかったのですが、積み上げられていた箱は震災で亡くなった方の身元不明の骨だとかなんとか。(あまり記憶に自信はないです)
そんなこんなで私たちはメモを取ったあと、前の祭壇で形ばかりですがお祈りをしました。
ふと時計を見るともうチェックポイントを通れる時間。
そろそろ行こう!と皆で振り返った時、おかしな事に気付きました。
おっさんがいないんです。
お堂の入り口は、最初におっさんが入ってきた入り口(祭壇の隣)と私たちが入った入り口だけ。
私たちは祭壇に向かって手を合わせていたためにおっさんが通れば気付きます。
じゃあ後ろにある、私たちが入った入り口から出たんではないか?
しかし、私たちの入った入り口には暖簾がかかっていたのです。
布の暖簾ではなく数珠が繋がったような大きな暖簾で、入るときにはどうしたって音が鳴ります。
私たちは誰一人、その音を聞いていません。
すぐに外へ出ましたが、おっさんの姿はありませんでした。
外は見晴らしがよかったので人の姿はかなり目立つのですが…
今でもあのおっさんは何だったのか、ふと思い出しては気になるばかりです。
長々と失礼しました。