結構昔のことで記憶が曖昧だから、若干脚色します。
私の家は年に一回お父さんのお父さん、つまり父方の祖父のお墓参りに行くのが恒例だった。
どの時期に行っていたのかは覚えてないけど、多分お盆だったと思う。
正直お墓参りはあまり好きじゃなかった。
やることもないし、お線香を触るのが怖かったから。
当時の私はお線香の火がそこらの草に引火して大火事になるんじゃないか、なんていらない心配をしてたんだよね。
両親が水を汲んだり火をつけたりせっせと動く中、私は退屈だなぁと思いながらぼんやり周囲を眺めていた。
そこで変なものを見つけた。
60代くらいのおばさんが墓石の上に直立していたのだ。
身体は全く動かさず、首や目線だけでキョロキョロ周りを見渡していた。
墓石の上に立っているということ以外は普通のおばさん。
あんなところに登るなんて非常識すぎる、なんで周りの人は注意しないんだろう・・・。
変なおばさんに関わるのが嫌でみんな避けているだけかもしれないけど、なんとなく避けているというよりは見えていないって感じだった。
おばさんの近くを通った参拝者も、おばさんには目もくれていなかった。
「ああ、幽霊なんだな・・・」って思った。
そういう幽霊の類はジロジロ見ないほうが良いって思ってたから極力見ないよう努めたのだけど、やっぱり気になっちゃってちょくちょくおばさんをチラ見していた。
目があってからはおばさんはずーっと私を凝視していた。
身体は動かさず、首だけを動かして私を目で追っていた。
流石に怖くなって、お参りも済んで他の参拝者と話し込んでいた両親に「お腹空いたから早く帰りたい」と愚図ったら、立ち話も早々に切り上げすぐに車を出してくれた。
私は我先にと車に乗り込み、窓から恐る恐るおばさんを見た。
まだこちらを見ていた・・・。
駐車場はおばさんから見てほぼ真後ろにあるのに、首だけをこちらにぐりんと向けて私のことをじーっと見ていた。
普通の人間じゃありえない首の可動域だった。
外から自分の姿が見えないよう体を縮こまらせてなんとかその場をやり過ごした。
その後は車窓に無数の手形が・・・とか、そういう類のことは起こらなかった。
ただ墓石の上に立っている、首の可動域がエグいおばさんを見たってだけのお話。
大したことない話だけど、当時の私はかなり怖かったです。
余談だけど、それ以降そのお墓に行くことはありませんでした。
次のお墓参りの時期が来る前に両親が離婚したから。
母に引き取られた私は、あれ以降父方のお墓参りには行っていない。