305: 投稿日:2011/09/10(土) 12:30:05.95 ID:m5yVuh0N0
よくある話でたいしたもんじゃないが、まあ一つ。
千葉県の養老渓谷付近の山間を、
最近中古で買ったキューブで走っていた時の話。
その日は丁度実家に帰省していて、家に帰る途中だった。
夜8時くらいだったと思う。あの辺走ればわかるけどほとんど街灯が無くて、
トンネルなんかも多い。
いやだなぁ、と思いながらも、次の日仕事だった俺は若干急いで帰路を辿っていた。
しばらく走り続けていると、丁度橋のあたりで通行止めになってしまっていたため、
仕方なく別の道を行くことに。
走り慣れていた道はその道だけだったので、俺はカーナビのスイッチを入れた。
「この先、10メートル、左折してください」
ほいほい左折ねー、と独り言を呟きながら、俺は見知らぬ道へ入った。
細い道をぐんぐん進んだ。季節が梅雨だったせいか、あたりには霧も出てきていて、
視界は極めて悪かった。
そのうち灯が一つもなくなって、車のライトだけが頼りになってしまった。
マイナーな道なのと、時間も時間だというのもあるのだろうが、
自分以外に走っている車はいなかった。
薄ら寒かったので、俺はさらにスピードを上げた。
「この先、2km以上、道なりです」
無機質なカーナビの音声に従い、俺は道をまっすぐに走る。
「この先、しばらく、道なりです」
だんだんと木々が少なくなっていき、霧も晴れてきた。
「この先、しばらく、道なりです」
つづき
俺はホッとした。
きっと走り慣れた通りに合流できるのだと思い、道の合流地点に気をつけるために
スピードを落とした。
視界が一気に開ける。
そして目の前に広がった光景を目の当たりにして、俺は急ブレーキを踏んだ。
そこには、道なんてなかった。
正確には、道がぶっつりと途切れていた。
下は、断崖絶壁。
焦ってバックで道を戻って茂みの方を見てみると、「この先危険!」と書かれた古びた看板が
地面に落ちていた。
俺はカチカチと歯を鳴らしながら、ごくりと唾を呑んだ。
「この先、しばらく、道なりです」
カーナビから聞こえてきた無機質な女性の声に、全身の血の気が引いていくのを感じた。
カーナビは何度も何度も同じ指示を音声で伝えてくる。
画面を見ると案内役の女性キャラクターが、いつも通りの満面の笑みを浮かべていた。