明日は日曜日で仕事休という土曜の夜。
明日の競馬の資金稼ぎと思ったのが間違いだったようだ
給料日まで一週間か…また前借りするか…などと考えながら、
俺はテレビを観ながらくつろいでいた。
親から継いだ一軒家に独りで居る
その親も亡くなって今は居ない
家の電話が鳴った
出ると
「さいとうさんのお宅ですか?」
「いえ、違いますよ」
よくある間違い電話だった。
一分ほど経った頃、また電話が鳴る
先ほどとは違う声で
「よしおだけど、たかし?」
「番号間違ってますよ」 またかよと思いながら電話を切る
そして、また電話が鳴った。少し苛立ちながら取り「はい?」と俺は不機嫌な声で出た。
今度は女の声で
「あの~、たなかさんのお宅じゃ?」
「なんかの嫌がらせ?いい加減にしてくれるかな。」ガチャ
叩きつけるように電話を切る
間髪いれず電話が鳴った
チッ、取ると言ってやった
「いい加減にしやがれ、バカヤロー!しつこいと警察に言うぞ」
ドスの効いた声が返ってきた
「警察?上等だ!うちから100万も借りてて、逃げられると思ってんの?」
「…」
「今から行くから待ってろ。す巻きにして東京湾に沈めてやるからよ」
「いや、違うんで…す…」ツーー・・電話が切れた
立っていられなくなった。全身から汗が吹き出し、寒さを感じてくる
頭が真っ白で逃げるという考えも浮かんでこないでいた
ただ電話を見つめたまま、フリーズしていたのだった
それからしばらくしてチャイムが鳴った
ピンポーンピンポーンピンポーン
ビクッ!その音に俺は我に還った。
ドアノブがガチャガチャガチャ
鍵は掛けてある
ドアをドン、ドン、ドンと叩きながら、先ほどのドスの効いた声が聞こえてくる
「居るんだろ?開けろコラ!」
早過ぎる。どうやら近くまで来て、携帯から電話してきてたようだ
「おいお前、逃げられないように裏へ廻れ」
二人以上で来たのは確実になった
「開けろや!」ドン!ドン!ドン!
腰が抜けて立てない
少しでも音から遠ざかりたくて、這って押し入れに逃げ込んだ
耳を塞いでいても聞こえてくる
俺は震えながら
『ちがうちがうちがう』
何度も声に出して言う
『ちがうちがうちがう』
トゥルルー
ドキッ!!電話が鳴った
トゥルルートゥルルー
出ないでいると、留守録に繋がる
「もしもし、よしだだ。
居るんだろ?悪かったな
今、人は間違い電話を何度も受けると、どのように心理変化していくか、
迷惑がらずに何回まで冷静に対処出来るか、心理学上のデータ集めてるんだっ」
「そこで悪いと思ったが、《すずき》にサンプルになってもらった訳だ。
詳しくは月曜に学校で話すよ。じゃ」切れた
ドン!ドン!ドン! ・・・「おい、かまわねーから窓割れ」
た・す・け・て・・・俺、《すずき》でもない・・
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