あたしの従妹が小学四年生の時に体験した話です。
仮にその従妹をA子としておきます。
A子が通っていた小学校は、4年生になるとクラス替えがあり、
親睦を深める為ってわけではないんでしょうが
山の途中にある少年自然の家的な施設に学年単位で泊り込んで
オリエンテーションやキャンプファイヤーなどを体験する行事ってあるじゃないですか、
A子の学校でも例外なくそのような行事がありました。
大抵は個別に部屋が分かれて縦長の部屋の両脇に二段ベッドが3列分で
合計12人が泊れるようなつくりになっていますがA子たちが訪れたのは
かなり昔からある施設でそうのような個別の部屋が少ししかなく、
畳が敷かれた数十畳の大部屋に男女別で2クラス分が一緒になり、布団を規則的に並べて泊る形式だったそうです。
新学期が始まって1ヶ月が過ぎ、A子はそれなりに仲良くなった友達もいましたが
クラス内ではまだそれほど友達の派閥グループが出来たような状態ではなかったそうで、
先生が作ったくじ引きを引いて寝る場所をくランダムに決め寝る事になったそうです。
その日の行事はオリエンテーリング、カレー自炊、キャンプファイヤーと
みっちりと予定が組まれており、一泊二日のためかお風呂に入ることもなく
クタクタになったA子たちは布団が敷かれた部屋にたどり着くと、
枕投げなどのお決まりの遊びをする余裕もなくすぐにみんな眠りについてしまったそうです。
A子もオリエンテーリングではしゃぎすぎたせいかあっという間に眠りに落ちました
A子は薄く目を閉じたまま、この施設に向かう前にクラスの女子で決めた約束事を思い出しました。
知り合いじゃなくても自分が寝ている場所から一番近い人と一緒に行こうね」
・・・A子は自分が置かれている状況を理解し、目を開けます。
他の人の体を踏まないようにA子も入り口でスリッパに履き替えます。
一歩廊下に踏み出すと、ポニーテールの髪型をしたその子はもうトイレに向かう曲がり角を曲がり終えようとしています。
A子も遅れないように急ぎ足で追いかけます。ヒタヒタとスリッパの音が廊下に不気味に響きます。
A子はトイレに起こした子が誰なのか確かめようとしましたが、
廊下を曲がり終えるとその子はもうトイレのドアを開け中に入ったようで
ポニーテールの先端を確認するのがやっとでした。
ギーバタン、個室のドアを閉める音が聞こえます 特に尿意を催す事もなかったA子は鏡で髪型を整えながら終わるのを待ちました。
軽い潔癖症のA子は古いトイレのドアノブを触るのに抵抗があったうえに、
もしかして大の方かもと思い、あたふたとしていました。そのとき、
「 な に を し て る の ?」 たのなら早く部屋に戻りなさいね」
A子はクラスの子がおしっこをしている旨を話すと、
先生は不思議そうな顔をしてこういいました
「たった今大広間を見回り確認してたんだけど、布団はA子ちゃん一人分しか開いてなかったわよ?」
とりあえずここは先生に任せて、A子ちゃんは部屋に帰りなさい。
A子は言われた通り部屋に戻ったそうです。
部屋に帰ってみると、確かに自分の布団だけぽつんと掛け布団がめくられており
自分ひとりしか部屋を出た痕跡はありませんでした。
A子は短大を卒業してある広告代理店に勤めることになり、
入社前研修として再びこの施設で
自己啓発などを兼ねた研修で利用することになりました。
同期の女子と夕食をともにしていると、ふとこんな話題があがりました。
「ねぇねぇ知ってる?今は取り壊されたけど、昔この施設で
小学生の子供が宿泊訓練で夜中に行方不明になったんだって。」
この事件は新聞にも載りました。