いつもなら、午後7時半から始まる合唱の練習に十五人の聖歌隊員は…
たくさんあるので試しに書いてみる。
『その確率は10億分の1』
それは、1950年3月1日の夕方に起こった。
アメリカ・ネブラスカ州にあるベアトリスという小さな町の
教会での出来事である。
いつものなら、午後7時半から始まる合唱の練習に十五人の聖歌隊員は、
その日に限って誰ひとりとして教会に現れなかった。
といっても、彼らがこのとき、とりたてて特定の事件や事故に巻き込まれた
わけではない。隊員それぞれに、どうしても避けられなかったちょっとした
十五の出来事があり、いけないと思いつつ遅刻してしまっただけなのである。
・ピアノを演奏する隊員は、いつものように練習の三十分前には教会へ行って
準備をしようとしていた、だからベッドでひと眠りしたいという母親を、
練習の時間に間に合うように起こしてあげるつもりだった。
ところが、自分もついついうたた寝をしてしまい、目覚めた時は時刻は7時十五分
をさしていたのだ。急いで身支度を整えながら、完全に遅刻だわと、彼女は思った。
・また、教会の牧師の家では、7時十分には家を出て教会に戻る予定だった。
ところが、出かける間際になって、妻が娘の服が汚れているのに気づき、
別の服を着せようとアイロンかけ始めた。かけ終える頃には7時二十分をまわっていた。
・他の隊員達も、車の故障や、宿題の片づけ、ラジオなど。
その晩、聖歌隊の十五人全員の身に起こったそれぞれの遅刻の理由は、あまりにありふれた
平凡なものだった。うっかり寝過ごす、子供に手がかかって予定が狂う、出かける間際に
車が故障する、ついつい時間を忘れる。それは誰の日常にもよくある出来事ばかりだった。
そして、誰ひとりとして、まさかほかの聖歌隊員も全員遅刻しているなど、思いもよらなかった
はずである。
突如教会で大爆発が起こり、教会の壁は砕けちり、重い天井は一直線に落下。建物は全壊した。
もし聖歌隊員全員、あるいは誰ひとりでも時間どおり教会に集まっていたなら誰一人助かっていなかったであろう。
その後インタビューで、
これまでご先輩方や、他のメンバーが遅れたことありましたか?の質問に対し、
いいえ、一度も、あの時がはじめて。と答えた。
十五人の聖歌隊員全員が遅刻する確率は、計算上十億分の一だという。
むしろ、十五人全員が爆発の犠牲になることこそ、もっとも起こりうる事態だったはずである。
END
偶然の一致とはいえ、教会だけに神がかりな何かを感じてしまう。
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