奇妙な話

【奇妙な話】大学の友人のシンジ

640: 本当にあった怖い名無し ID:m17mKrjq

学生時代の話。

20150116a


期待に胸を膨らませて地方の駅弁大学へ入学した。
周囲は知らない人ばかり。そんな中でひょんなところで最初に知り合ったのが
シンジだった。
シンジとは結構馬が合って、授業が終わっても一緒に遊んだりしていた。
とはいってもあまり恵まれた環境ではなかったみたいで、
服はチェックのシャツを数枚持っているだけで、夏も袖をまくって着ていた。
ただ、汚らしいイメージはなくて、男性にしては珍しくアイロンがけとかしていて
それなりに清潔な身だしなみだった。

シンジの下宿にも何回か遊びに行った。
古ぼけた下宿の4号室。半畳の土間の横は作りつけの箪笥。
部屋は4畳で狭かったが、いつも几帳面に片付けていた。
「俺ってあんまり恵まれてないからさ、狭い下宿でゴメンね」と
すまなそうな顔を彼がするたびに気まずい気持ちになっていた。

3年の終わりから暫く個人的な問題で気が滅入っていて、
正常な思考が出来なくなっていたが、なんとか4年に進級して、
学校にも通うことが出来た。
何故かシンジは来ていない。4年になって殆ど単位を取得したのかな、と
思いながらシンジの消息を聞いた。

 

 

641: 本当にあった怖い名無し ID:m17mKrjq

「シンジって誰だよ?」全員の返事だった。
「ちょ、ちょっと待てよ。ほら、一緒にシンジの部屋へ行ったときに
狭い下宿でゴメンねってすまさそうな顔を…」といいかけたとき、
俺は気づいたのだ。
記憶の糸が少しずつ解れて行く。おかしい。奇妙なことが多すぎる。
「すまなそうな顔をした」シンジの顔が思いつかない。苗字も知らない。
あいつの学籍番号さえ知らない。
何故だ?何故だ?だってあいつの下宿は…
考えてみればおかしいことばかりだ。
あいつの部屋ってそういえば3号室のドアと5号室のドアに挟まれてたぞ。
普通、部屋があるからスペースがあるじゃないか。
あいつの部屋、4畳のはずだったけど、正方形だったよな。
4号室、4畳、下宿の住所「○○944番地」、いなくなったのが
4年の4月…執拗に重なる「4=死」のイメージ…
あいつの名前、シンジ…シンジ…信士?戒名???
俺は全てがわからなくなって叫んでしまった。

暫くわけがわからず授業にも出ずにすごしていた。
あれは俺の思考回路がおかしくなったときに
バグとして挿入された偽記憶だったんだろうか。
彼がいた(と思っている)下宿にも行ってみたが、
3号室の隣は5号室だった。
窓を開けて一緒に見た景色も、隣も下宿の壁でありえないものだった。

 

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