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【怖い話】海辺の民宿に泊まった夜に起きた奇妙な体験

8: 本当にあった怖い名無し 2015/07/03(金) 00:20:25.59 et

それでは早速。
この話を公表するのはじめてです。

huton

社会人になりたての頃、学生時代の仲間数人で
海辺の民宿に泊まり込んだ時の出来事。
新社会人のプレッシャーを忘れ、学生気分でダラダラ過ごそうと企画されたお気楽一泊。
日中、存分に海水浴を楽しんだ後で俺たちは宿に戻り、
たそがれ時の薄暗い室内で一息ついていた。
「なあ、飯食ったら花火するんだろ?」
「買いにいかなきゃ。コンビニ遠いぞ」
「ドリンクも切れたし行くしかないだろ」
「それより裏山で肝試ししねぇ?」
なんて話をしていると、部屋のふすまがガラっと開いた。
そこに立っていたのは、俺たちにはお馴染の「おっちゃん」だった。

俺たちは高校時代、何をするでもなく放課後の図書室でダベっていた。
放課後の図書室は一種のサロン状態だった。
その輪の中に用務員のおじさんもいた。
奥さんが車で迎えに来るのが夕方なので、それまでの間
図書室で学生たちと雑談して暇を潰していたのだった。
陽気でぶっちゃけた人柄で、皆から「おっちゃん」と親しまれていた。

そのおっちゃんが部屋の入り口に立っていた。

 

9: 本当にあった怖い名無し 2015/07/03(金) 00:21:58.32 et

そのおっちゃんが部屋の入り口に立っていた。
憮然とした表情で室内を見下ろしている。
おっちゃんに目が釘付けになる俺たち。
おっちゃんは何故、俺たちがここにいるのを知っていたんだ?
偶然この宿に泊まっていたのか?
…いや、おっちゃんは、俺たちが高校三年の時、交通事故で他界している。
図書室の有志で奥さんに追悼の手紙も出した。間違いのない事実だ。
なんだ、何なんだこれ。
凍りついた雰囲気を破るようにおっちゃんが口を開いた。
「お前らここにいたんか?」
「は、はい…いました…」
友人の一人が間抜けな返事をする。
皆、固まっていた。ここにおっちゃんがいる事の異常性に皆気付いているようだった。
おっちゃんはしばし、気難しそうな顔で考え込み
「大変な事だぞ...」
とつぶやいて廊下の向こうに去っていった。

 

10: 本当にあった怖い名無し 2015/07/03(金) 00:22:51.55 et

「おい?見たよな?」
「似た人…じゃないよな…?」
こわばった顔を見合わせる俺たち。
団子になって恐る恐る廊下を覗いてみる。
薄暗い廊下には誰もいなかった。
「おっちゃん? おっちゃーん?」
恐る恐る呼びかけながら廊下を検分すると
突き当たりの共用トイレのドアから、何かモヤのような白いものが漏れている。
「アレ何だ?」
「俺が開けてみる」
友人の一人が、トイレ照明のスイッチをつけ、意を決してドアを開く。
ぶわっ、と白いガスが渦巻いて俺たちは軽いパニックになった。
「うわっ…」ドアを開けた友人が絶句する背後からトイレを覗き込むと
真夏の盛りだというのに、トイレの水は凍りついていた。
水ばかりではなく、便器もタンクも白い霜に覆われ、
タンクの上に飾られた草花がドライフラワーのように固まっていた。
その冷気が廊下の澱んだ熱気でモヤになったのだった。

 

11: 本当にあった怖い名無し 2015/07/03(金) 00:23:55.20 et

俺たちは民宿側にトイレの凍結を伝えた。おっちゃんの件は伏せて。
民宿のおじさんは最初、俺たちの悪戯を疑っていた。
「スポーツの後のアイススプレーとか撒いたんじゃないの?」
「それっぽちでこんな凍りませんよ!」
「むぅ…」
おじさんは俺たちの怯えようと、トイレの完璧な氷結ぶりを見て疑いを捨てたようだった。
「冬場でも凍らないのに…」と首をかしげながらも
タンクと配管の検分を行い
「中の水がカッチカチだ。今夜は使わないでね」と一言。
溶け出した霜を受けるタオルをトイレの床に敷いて戻っていった。

用務員のおっちゃんは俺たちに何か伝えたかったのか。
大変な事とは何だったのか。
トイレを凍らせたのはおっちゃんなのか。
その時いた友人たちと、会うたびに話題になるが何一つ結論は出ない。
あまりに不可解な夏の日の思い出。

 

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